最近のAIの進歩は人間の予想を超えてばかりで
いやそんなAIはないやろ
いつの時代のSF
“人間そっくりの受け答えを
することができるのだけど”
“でもひとつだけ、
人間との決定的な違いがあって”
“その違いは埋めようにも、
どうすればいいか見当もつかないよ”
ほうそれはいったい
それがクオリアだよ
ほう海の天使
クリオネじゃなくてクオリアね
かなり無理があるし
まあよいではないか
で、そのクオリアとは?
“私たちの意識、
主観が体験していることだよ”
AIにはその体験がないと?
うむうむ
たとえばAIが海を見る時
カメラで海の景色を取り込むわけだけど
このときAIは何を見ているのか
え、海を見てるんじゃないの?
“海の眺めは、
光としてカメラに取り込まれ”
“カメラで電気信号に変換されて、
コンピュータに伝えられ”
あれ、コンピュータとAIってちがうの?
“コンピュータはハードウェアで、
AIはソフトウェアだよ”
ふむ
“でまあとりあえず、
カメラを通って電気信号に変わった海の眺めは”
コンピュータで数値データに変換されて
AIはこの数値データを見ているよ
ああ、海じゃなくて数字を見てると
うみうみ
“だから、AIが海を見て、
「美しい海ですね」と言っても”
それは、海を見ているわけじゃなくて
“数値データを見て、
「このパターンは人間なら
美しい海だという可能性が高い」
と判断し”
そのように言っているだけだよ
にゃるほど
だからAIの言う冗談はイマイチなのね
いやそれはどうか知らないけど・・・
“だって、AIが、
「この言葉は人間が冗談として理解する可能性が高い」
と思って、その冗談を言ったとしても”
“人間からすると、
「なんだよその何度も聞いたような
一昔前のジョークは」
って思っちゃうんじゃない?”
まあそうだけど
それはさておき
“AIが見ているこの数値データは、
外部から確認することあできるよ”
“ふむ、数字だもんね、
表示してもらえばいいよね”
トーコローガ
“人間様の場合は、
クオリア?があると”
うむうむ
AIとはどうちがうのかね
では人間が海を眺める場合
“もちろんカメラではなく、
目で見るわけだけど”
うるうるしてんね
“でも途中までは、
さっきのカメラと話は同じで”
“海の眺めは、
光として目に入ってきて”
“網膜にぶつかって、
電気信号に変換され”
“その電気信号が、
視神経を通って脳に伝えられ”
それで私たちは海を見ることができるよ
さて、さっきのAIの話とどこがちがうでしょう?
ふむ・・・
この、人間の場合・・・
途中で話が飛躍したね
ほうどこが?
“海の眺めが電気信号になって脳まで届く、
というところまでは話が繋がってたけど”
“その後突然、
「はい海が見えました」って”
話が切れてるじゃん
うむうむ
“AIの場合は、
電気信号が数字に変換されたものを
見ていたわけだけど”
“人間の場合、海を見た瞬間、
数字の羅列が見えるなんて人は・・・”
“まあいるかもしれないけど、
ひっじょーーに稀で・・・”
ましてや電気信号が見えるなんて人もいないし・・・
“海を見たら、
当たり前のように海が見える”
ソダーネ
“でも、電気信号が、
どこで海の映像に変換されたの?”
ということだね
うむうむ
“もちろん、脳内に電気信号を
3次元映像に変換するモニタがある、
なんてことはない”
“脳内には、
電気信号と化学物質のやり取りしかない”
それなのに、不思議なことに
“私たちは電気信号ではなく、
ちゃんと「海」を見ている”
“この、主観が体験していることが、
クオリアと呼ばれるよ”
ふむ、私たちは海を見ているけど
“そのとき、脳内のどこを探しても、
海の映像は見つからないね”
見つかったら笑うけど・・・
それに加えて、クオリアで大事なのは
“AIが見ている数値データは、
外部から確認することができるけど”
“人間の主観が体験しているクオリアは、
外部から絶対に確認することができないよ”
“でも、同じ物を見れば、
同じものが見えるのでは?”
“たとえばAさんとBさんが、
同じ青い紙を見ているとして”
“ふたりとも、
「青い色が見えている」と言ったとしても”
“青い色に対する、
Aさんの見え方と、
Bさんの見え方が”
同じかどうかは確かめようがないよ
ふむ、数字なら照合できるけど
“クオリアは本人にしか見えてないから、
照合しようがないか・・・”
“でもあれじゃない、
科学が進歩して”
“脳波を分析して、
その人が見てるものを、
映像化できるようになれば”
クオリアを確認できるのでは?
それも無理だよ
なんでやねん!
Aさんがこのモニタの映像を確認して
「そうそう、まったくこの通りに見えました!」
と言ったとしても
“Bさんは結局、
このモニタの映像を、
自分の主観で見なければならないので”
結局自分のクオリアしか見えないわけか・・・
Aさんの主観で見ることはできないよ
じゃあ、Bさんが超能力者で
“Aさんに乗り移って、
海を眺めることができれば・・・”
“いや、それでも結局、
見ているのはBさんの主観か”
うむうむ
どもならんねこれは・・・
“ということでこの、解くのは
絶望的とも思える謎”
“電気信号がどこでどうやって
映像に変換されて”
“それを私たちの主観は、
どこで見ているのか”
確認する方法がさっぱりわからない
ということで
“オーストラリアの哲学者、
デイヴィッド・チャーマーズさんによって”
「意識のハードプロブレム」と名付けられたよ
ハード・・・
“これに対して、
脳を調べれば分かる範囲の意識の問題は”
「意識のイージープロブレム」と呼ばれるよ
脳だけでもじゅうぶん難しいと思うけどね・・・
ソダーネ
ちなみに
“人間と区別できないような反応をするけど、
クオリアだけはない、という存在を”
“さっきのデイヴィッド・チャーマーズさんは、
「哲学的ゾンビ」と呼ぶよ”
あ、クオリアが消えてる
つまり最近のAIは哲学的ゾンビというわけね
そだね
“AIも充分進歩すれば、
クオリアを持てるのだろうか・・・”
それもわからないよ
“もしクオリアが発生しても、
確認しようがない”
ナンテコッタ
ソーレカラ
意識のハードプロブレムを解き明かさないことには
みんな大好きマインドアップロードもできない
“ああ、自分の意識を、
情報空間に移すっていうやつ・・・”
まあ、完璧な人格コピーならできるかも知れないけど
“それだとさっきの哲学的ゾンビであって、
意識が移ったわけじゃないからね”
うむうむ
もうひとつ、興味深い問題としては・・・
“脳が私たちの主観、
自分の意識を作っていると仮定すると・・・”
私たちはチートレベルにラッキー
“というか、「絶対チートしたでしょ!」と、
言いたくなるような存在となる”
“ああ、私たちに都合の良い
この宇宙ができる確率なんて”
ほぼゼロだっていう話?
“それもあるけど、
それだけじゃないよ”
都合が良すぎる宇宙だけなら
マルチバース理論で解決できるんだけど
“ああ、無数に宇宙を作れば、
1個くらいめっちゃ都合の良い宇宙は
できるだろうっていう”
うむうむ
でも困ったことに
脳が私たちの主観を作ると仮定した場合
“私たちの主観、自分の意識は、
「この」宇宙にしかできないよ”
え?どゆこと?
たとえば、無数に宇宙ができた中で
たった6個しかありませんが
無数はかけないからしかたないでしょ
なんか1,2,3番目とかじゃなくて
1兆1,1兆2、1兆3を略したものとでも思っておいて
ふむ
んで、まあとにかく
無数に宇宙ができた結果
“超ラッキーにも、
宇宙2がとても都合の良い宇宙”
つまり私たちの宇宙となったとしましょ
ふむ、宇宙2で私たちは生まれると
“で、この場合、
私たちの主観、意識は、
宇宙2にしか生まれないよ”
えーと、言いたいことがわからないけど
2が私たちの宇宙
うむ
でも、無数に宇宙ができた結果
“6が偶然にも、
2と何もかもまったく同じ宇宙になったとする”
“となると、
6にも自分とまったく同じ人間がいることになるけど”
“宇宙2のAさんと、
宇宙6のAさんは”
“肉体も性格も能力も、
人間関係も生活環境も”
“何もかも同じだけど、
意識は同じものかな?”
いや、意識は別でしょ
“一卵性双生児だって、
別々の意識なんだから”
“つまり、2のAさんの意識は、
宇宙2にしか生まれることができない、
ということになるよ”
あー、つまり
宇宙は無数にできるけど
“2のAさんの意識からすると、
チャンスは1回しかなかったってわけか”
ほかの宇宙が偶然まったく同じものになっても
意識は別だからね・・・
うむうむ
だから、宇宙2がなにかちょっとだけ違っただけでも
2のAさんの意識は生まれなかったわけだから
ああ、それでチート級にラッキーだと
うむうむ
“有性生殖だけ考えても、
2のAさんの意識が生まれるのは、
とんでもなく低い確率になるし”
“両親の精子卵子の組み合わせだけでも、
わけわかんないくらい多いのに”
“有性生殖が始まって以来だと、
先祖が何千万世代いるかわからない・・・”
それで全部当たりを引かないといけない
“それよりも、
毎日宝くじを買って、
一生1等当て続けるほうが高確率だよ”
チートだわ・・・
“意識以外は、
無数に宇宙をつくれば、
偶然都合の良いものはできるけど”
“自分の意識は、
チャンス1回きりか・・・”
うむうむ
そうそう、もう一つ困った問題として
まだあるのかよ
“私たちは、対象自体を、
なにをどうがんばっても認識できない”
ああ、あくまで感覚器が捉えた情報を
謎のシステムがクオリアに変換したものしか
体験できないから
“さっきの例で言うと、
クオリアに現れた海を、
私たちは見ることができるけど”
海自体はわからないね
うみうみ
“カントさんはそれを、
「物自体」と呼んだよね”
“物自体と聞くと、
なにかものがあるんだとイメージしてしまうけど”
物があるかどうかもわからないよ
ふむ、ヴァーチャルかも知れないと
“ただ、物自体は認識できず、
クオリアしか体験できないことを考えると・・・”
“ヴァーチャルとリアルを、
区別する意味もなくなりそうね”
なんだか色即是空空即是色みたいな話になったね
トイウコトデー
今回はクオリアと意識のハードプロブレム
“最も身近なのに最大の謎、
という話でした”
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