株の取引をしようと思いますと、決算短信は避けては通れないようです。^^;
以前紹介した書籍には、当然のように「決算短信を見るべし」と説かれているわけですよね。
でも、私のように数字に弱い人間はどうも気が重い。^^;
それで何か、決算短信の読み方に関する良い本はないかと探していたのですが、ありました。
角山智さんの「銘柄分析力強化トレーニング」という本です。
この本は、「投資家目線」で決算短信のどこをどう見ればいいかが説明されています。
だから、わけの分からないどうでもいいようなことがごちゃごちゃと説明されているのではなく、投資する際に見るべきポイントがわかりやすく説明されています。
それに加えて「練習問題」がいくつかついていますので理解を深めやすいですね。
ということで決算短信の読み方ですが・・・
決算短信の表紙を見て短時間で判断する
重要な部分は決算短信の表紙、つまり1ページ目を見れば、かなりの部分がわかるようです。
決算短信の表紙では、以下の3つをチェックします。
・経営成績
・財務状態
・キャッシュフロー
この3つ。
で、それぞれどこを見ていくのかということですが・・・
経営成績
一つ目として、当期の業績を見ます。
目安としては、
・売上高が7%以上アップしているか
・営業利益が10%以上アップしているか
・売上営業利益率は少しでもアップしているか
というところですね。
それから純利益は営業利益の6割くらいが普通なので、それとあまりにずれているようなら「何かあるんじゃないか?」と疑ってみるべし、とのこと。
二つ目として、来期の見込みも見ます。これは表紙の一番下に出ています。もちろん今期よりもアップしていることが重要です。
三つ目として「割安かどうか?」を見るわけですが、これは例によってPERを見ます。
その銘柄の過去のPERと比べて割安かどうかを判定するのがより正確が、「銘柄分析力強化トレーニング」では「短時間で判断する」ことを重視して「PER15倍」を基準にしています。
これは全銘柄の平均値から割り出された数値で、これより低ければ「まあ割安かな」と判断しておくということです。
計算に用いるのは「来期の予想EPS(一株当たり利益)」です。
4つ目として配当ですね。これはもちろん前年に比べて上がっているのが望ましいです。
配当利回りとしては3%あれば優秀ですが、5%を超えるものについてはこれまた「何かあるんじゃないか?」と疑ってみるべきです。
財務状態
次に財務ですが、これは総資産、自己資本比率、ROE、ROA、PBRを見ます。
総資産は増えていたほうがいいのですが、借金で水増しされていては困りますので、自己資本比率を合わせてみます。
自己資本は50%以上が望ましいですが、業種によっては低くてもOKとなっています。たとえば、総合商社や金融業、不動産業、電力会社などがそれにあたります。
次にROE、ROA。これは資産をいかに効率的に利益につなげているかを示す数字です。
まず、
総資産=自己資本(純資産)+負債
というのが前提。
で、
ROE(自己資本利益率)=当期純利益÷自己資本
ROA(総資産利益率)=当期純利益÷総資産
と計算されます。純利益の割合を計算しているだけですね。
ROEのほうは、自己資本に対する純利益の割合。ROAのほうは総資産=会社の資産全部に対する純利益の割合です。
総資産=自己資本(純資産)+負債
ということなので、利益を増やすために借金をたくさんするほど、ROEの数値は大きくなります。「レバレッジを利かせている」ということですね。
まあ細かい話は置いておきまして、ROE、ROAの目安としては、ROEは10%以上、ROAは7%以上となっています。
これ、借金をたくさんするほど、ROEとROAの数値は離れていきますね。
PBRというのは「株価純資産倍率」と訳されます。・・・なんのこっちゃわかりませんね。^^;
株価が一株あたり純資産(自己資本)の何倍かを示す数字です。次のように計算します。
PBR=株価÷1株あたり純資産
PBRの目安は「1倍以下ならその株は割安」ということになります。
PBR1倍ということは、時価総額=純資産(自己資本)ということですので、会社が倒産しても、自己資本をすべて処分すれば、株を持っている人全てにお金を返せる、ということになりますので。
1倍未満だと、時価総額が純資産より少ない、ということになります。株主に全部お金を返してもまだ余るということですね。
ただ、あまりにPBRが低い場合は、「何かあるんじゃないか?」と疑うべきとのこと。「こんなに純資産があるのに株価が上がらないなんて、よほど何か不都合なことでもあるんじゃないか」ということですね。
キャッシュフロー
決算短信表紙のチェックポイント、3つ目はキャッシュフロー(CF)です。
これは要するに、帳簿上の利益とかではなく「実際現金を持っているか」を見るための数字です。
基準は以下のようになります。
・営業CFがプラスかつ純利益より多い
・FCF=営業CF+投資CFがプラス
・CFROA=営業CF÷(総資産-現金同等物)が10%以上
営業CFというのは、本業で手に入れた現金ですね。これがマイナスではダメ、また帳簿上の純利益より少ないという場合も警戒すべきとのこと。
FCFがマイナスになる事態というのは、いくら営業CFが多くても、それ以上に投資に使っていては現金が手元に残らないということですね。それじゃ困るというわけです。
CFROAはROAのキャッシュフロー版ですね。
ROA=当期純利益÷総資産
CFROA=営業CF÷(総資産-現金同等物)
ということで似ています。
現金同等物を引いて計算するのは、営業CFが現金なので、分子にも分母にも現金が入っていては分子が大きくなるに連れて分母も大きくなってしまうので数値の意味が薄れてしまうからでしょう。
まとめ
ということで、「銘柄分析力強化トレーニング」のうち、決算短信の表紙の見方の部分のみを簡単に見てみました。
表紙を見るだけなら、短時間で判断することができます。
たとえば、機械的なスクリーニングで銘柄を絞り込んだ後、さらに決算短信の表紙を見て、ダメなものを除外していくことで、さらに絞り込むことができます。
もっと深く見るためには「銘柄分析力強化トレーニング」ではセグメントや損益計算書の見方も解説されています。
これによってさらに絞り込むことができますね。
また、決算発表の際も、決算短信の表紙を見て、良い決算なのか悪い決算なのか、短時間のうちに判断することも可能でしょう。
ということですので、「銘柄分析力強化トレーニング」を実際購入して、練習問題もやってみるのがおすすめです。
その後、実際にたくさんの会社の決算短信を見ていけば、成績の悪い会社の株を「ネット上の評判だけ」で買ってしまって大損したり・・・ということも減るでしょう。
私のような数字に弱い人間でも理解できた本ですので、決算短信の入門用書籍としては、最高のものなんじゃないかと思います。
ちなみにこの本、Kindle Unlimitedを利用すると無料で読めます。^^
Kindle Unlimitedについてはこちら。