貸金業法が改正されて、以前よりさらに、「ひどい取り立て」というのはできなくなりました。
で、借金の取り立てを規制しているのは貸金業法の第21条なのですが、中でもその第1項ですね。
これ、法律の文章を見ても「わけがわからない」ってなりそうなので、法律の文章を掲げつつ、それを簡潔に言い直してみようと思います。
まず、貸金業法第21条1項の前文ですね。前置きの文章。前置きというより、こちらがメインと言ってもいいでしょう。
貸金業法第21条1項の前文
貸金業を営む者又は貸金業を営む者の貸付けの契約に基づく債権の取立てについて貸金業を営む者その他の者から委託を受けた者は、貸付けの契約に基づく債権の取立てをするに当たつて、人を威迫し、又は次に掲げる言動その他の人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動をしてはならない。
【解説】
取り立てにおいて、
「人を脅すようなことをしちゃいけないし、生活とか仕事の邪魔をするようなこともしちゃいけませんよ」
ということですね。で、以下に「やってはいけないこと」を例として示します、ということです。
貸金業法第21条1項第1号
正当な理由がないのに、社会通念に照らし不適当と認められる時間帯として内閣府令で定める時間帯に、債務者等に電話をかけ、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は債務者等の居宅を訪問すること。
【解説】
内閣が「不適当」と定めた時間帯に、取り立てをしてはダメ、ということですね。
具体的には21時から翌日朝の8時までが「不適当」です。
第2号
債務者等が弁済し、又は連絡し、若しくは連絡を受ける時期を申し出た場合において、その申出が社会通念に照らし相当であると認められないことその他の正当な理由がないのに、前号に規定する内閣府令で定める時間帯以外の時間帯に、債務者等に電話をかけ、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は債務者等の居宅を訪問すること。
【解説】
これはたとえ「不適当」ではない時間帯、つまり昼間であっても、借金した人が「この時間に連絡して」と申し出た時間帯以外に、取り立てをしてはいけませんよ、ということです。
たとえば、夜勤とかで昼間寝ていなくちゃいけないから、「午後6時頃おねがいしますね~」って頼んだにもかかわらず、昼間に取り立てに来るとかですね。
そういうのはダメだということ。
第3号
正当な理由がないのに、債務者等の勤務先その他の居宅以外の場所に電話をかけ、電報を送達し、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は債務者等の勤務先その他の居宅以外の場所を訪問すること。
【解説】
これは自宅以外のところに取り立てに来てはいけないということです。
法律の文章は「勤務先ならいいの?」って誤解しそうな文章ですが、勤務先もダメです。
もちろんこっちから「勤務先に来てください」って頼んだ場合はOKですよ。
第4号
債務者等の居宅又は勤務先その他の債務者等を訪問した場所において、債務者等から当該場所から退去すべき旨の意思を示されたにもかかわらず、当該場所から退去しないこと。
【解説】
これは、たとえ取り立てに来ても「帰ってください」って言われたら素直に帰らなければいけない、ということ。
第5号
はり紙、立看板その他何らの方法をもつてするを問わず、債務者の借入れに関する事実その他債務者等の私生活に関する事実を債務者等以外の者に明らかにすること。
【解説】
近所の人とかに「この人借金していますよ~」とか広めてはダメ、ということですね。それ以外の私生活についてバラすのももちろん禁止。
玄関先で「◯◯金融ですが~!」なんて叫ぶとか、取り立てに来たことがわかるようなことをするのもダメです。
第6号
債務者等に対し、債務者等以外の者からの金銭の借入れその他これに類する方法により貸付けの契約に基づく債務の弁済資金を調達することを要求すること。
【解説】
「うちに返済するために、××金融から借り入れしてください」
なんて要求するのは禁止、ということですね。
第7号
債務者等以外の者に対し、債務者等に代わつて債務を弁済することを要求すること。
【解説】
これはたとえば、親のところに行って「おたくのお子さんの借金を代わりに・・・」とか、返済を迫ってはダメ、ということですね。
返済義務があるのは、お金を借りた当人だけですので。
保証人になっているのであれば、話は別ですけど。
第8号
債務者等以外の者が債務者等の居所又は連絡先を知らせることその他の債権の取立てに協力することを拒否している場合において、更に債権の取立てに協力することを要求すること。
【解説】
債務者の友人知人などに、
「借金の取り立てに協力してよ」
と強要することは禁止です。
たとえ「居場所を教えろ!」程度でも禁止。
第9号
債務者等が、貸付けの契約に基づく債権に係る債務の処理を弁護士若しくは弁護士法人若しくは司法書士若しくは司法書士法 人(以下この号において「弁護士等」という。)に委託し、又はその処理のため必要な裁判所における民事事件に関する手続をとり、弁護士等又は裁判所から書面によりその旨の通知があつた場合において、正当な理由がないのに、債務者等に対し、電話をかけ、電報を送達し、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は訪問する方法により、当該債務を弁済することを要求し、これに対し債務者等から直接要求しないよう求められたにもかかわらず、更にこれらの方法で当該債務を弁済することを要求すること。
【解説】
ちょっと文章が長くてその上わかりにくくて、吐きそうになるかもしれませんが。(汗
まあ要するに、借金している人が、借金の整理を弁護士とか司法書士に頼んだ場合は、消費者金融はもう「借金している当人」に取立てすることはできないということですね。
消費者金融は、その弁護士なり司法書士なりと交渉しなければなりません。
第10号
債務者等に対し、前各号(第六号を除く。)のいずれかに掲げる言動をすることを告げること。
【解説】
これは、この第21条1項で禁止されていることを「やるぞ」と言うだけでも、「脅し」になるから禁止、ということですね。
以上、貸金業法第21条1項を、わかりやすく言い直してみました。
法律は国民のためにあるはずですが、わざとわかりにくく書いてるんじゃないかと勘ぐってしまいますね。