花粉症とかアレルギーとかで悩んでいる人は、「ヒスタミン」という言葉を耳にすることが多いと思います。
で、花粉症の原因みたいに言われますと、
「ヒスタミンって何なのさ? 悪者?」
と思いますよねぇ。でも、体内で普通に作られるわけだから、悪者というわけでもなさそうです。
ということで、ヒスタミンとは何かと。
ヒスタミンの原料
まず、何から作られるかというとアミノ酸です。アミノ酸って、タンパク質を作るための物質ですよね。
そのアミノ酸である「ヒスチジン」からヒスタミンは作られます。
だから「生体内アミン」の一種と言われます。
ヒスタミンの作用
次に、ヒスタミンをその「作用」からみた場合、ヒスタミンは「オータコイド」の一種と言われます。
「オータコイドってまた・・・聞きなれない言葉が・・・」
と思ってしまいますが、まあ、少しの量で体に色々な変化をもたらす物質、と思っておけばいいですね。^^
別名局所ホルモンです。ホルモンって、少しの量で体に色々な変化をもたらしますよね。
だからですね、ホルモンと同じようなものだということは、外部からやってくる細菌とかみたいな悪者ではないんです。
普通に働いていれば、体のために役立ってくれている、ということですね、ヒスタミンは。
「普通に働いていれば」ということですが・・・じゃあヒスタミンにはどんな働き、作用があるの?ということになりますね。
ヒスタミンの作用には以下の様なものがあります。
・血管拡張
・血管透過性亢進
・平滑筋収縮
・腺分泌促進
・侵害受容器刺激
さて、この中でわかりにくいのは・・・
それぞれの作用の説明
「血管拡張」はいいですね。血液の通り道が広くなるということですよね。
「血管透過性亢進」、これはちょっとわかりにくい。
これ、血管の壁を、白血球なんかが通りやすくなるということです。
「平滑筋収縮」というのは、平滑筋という筋肉、気管支などにあるんですけど、それを収縮させること。
「腺分泌促進」というのは、まあ涙とか鼻水とかどんどん出してくれるということですね。
「侵害受容器刺激」というのは、まあ神経を刺激するということですね。これによって「痛み」とか「かゆみ」が生まれます。
なんのためにそんな作用があるのか
次に、以上の作用が、なんのためにあるのかと。
これはもう、「外敵」から体を守るためと考えられますよね。
「敵」が現れたところには、白血球=兵士を向かわせなければなりませんので、その通り道=血管は広くした方がいいですよね。
それから、敵は血管の外にもいるわけだから、白血球が血管の中から出られないというのでは戦えません。なので血管の壁を通りやすくする。
肺に悪いものが入りそうな場合は、せきをして追い出す必要があるので、平滑筋を収縮させて、せきをさせるということですね。
あと、悪いものは洗い流してしまいたいから、涙や鼻水もよくでるようになる、ということになります。
また、「痛み」が感じられなければ、体に傷がついても気づかないかもしれませんし、「かゆみ」がなければ、害虫とか有害物質とかが体にくっついていても気づかないかもしれません。
かくのごとく、ヒスタミンは普通に働くなら「体を守る」ことに役立ってくれると考えられます。
でも。
度を超えてしまうと…
以上のヒスタミンの作用が度を超えてしまうと・・・困ったことになるんですよね。
反応しなくていいものに体が反応して、ヒスタミンを大量に作り続けてしまうと、いろいろなアレルギー的症状が出てきます。
たとえばアトピー性皮膚炎で肌のかゆみが止まらないのは、ヒスタミンが神経を刺激し続けてしまっているからです。
また、「血管透過性亢進」が続いてしまうと、肌に湿疹が広がったりします。
血管の中から白血球とともに水分もたくさん出てきて、いわゆる「ジュクジュク」の状態になるわけですね。
平滑筋の収縮に関しては、喘息発作を思い浮かべるとわかりやすいです。気管支の平滑筋が痙攣してしまっているわけですね。
鼻水や涙については、花粉症で悩んでいる人は非常に多いでしょうから、これまた理解しやすいところです。
なぜ度を超えてしまうのか?
ただこれらの症状は、ヒスタミン自体が悪いというより、作らなくていい場合なのにヒスタミンを大量に作ってしまう細胞のほうが問題なんです。
たとえばヒスタミンを作る細胞としてよく知られているのが「肥満細胞(マスト細胞)」ですね。
ちなみに、ヒスタミンを作る細胞は、肥満細胞以外にも、好塩基球、ECL細胞、ニューロン、マクロファージ、樹状細胞、好中球などがあります。
で、そういう反応しなくてもいいものに反応して、いろんな細胞がヒスタミンを過剰に作り出すことでアレルギー症状が出てくる仕組みはわかっているのですが・・・
なぜそんな狂ったことをしてしまうのか、ということについては、現代の医学ではまだよくわからないそうです。
おそらく、いろいろな要因が複合的に働いているため、物事を細かく分析的に見ていく西洋医学ではつかみにくいということなのでしょう。
東洋医学的に見れば「調和が崩れているから」という一言で終わるのかもしれません。
さて次に。
ヒスタミン食中毒はアレルギーとは違う
ヒスタミン食中毒という言葉を聞いた事があるかもしれません。
これは、アレルギーとはまた違うもので、ヒスタミンを大量に「食べてしまう」ことによって起こるものです。
「ヒスタミンを食べる? そんなことないでしょ」
なんて思うかもしれません。
たしかに最近はそんな機会は減っていることでしょう。
なぜかというと、これ、古い魚を食べることでよく起こっていたからです。特に赤身魚で多かったようです。
なぜかというと赤身魚はヒスタミンの原料であるヒスチジンをたくさん含んでいます。そこに、食中毒のもととなる細菌が付着して、さらに常温でほったらかしたりしていると・・・
その細菌が増殖して、ヒスチジンをヒスタミンに変えていくわけですね。じゃんじゃん変えてしまう。^^;
で、いいかげんヒスタミンが増えたところで人間がこの魚を食べてしまうと・・・ヒスタミン食中毒になるということです。
ヒスタミンは、少量でいろいろな変化をもたらす物質でしたね。上に書きましたが。これを大量に食べてしまうわけですので、体に不調が起こってもおかしくないわけです。
それがヒスタミン食中毒。
でも、アレルギーのように自分の体でヒスタミンを生み出しているわけではないので、アレルギーのように長く症状が続いたりはしません。
ただ。
このヒスタミン食中毒で気をつけなければならないのは、
「本当にヒスタミン食中毒なの?」
ということです。もっと別の大腸菌なんかによる食中毒かもしれないし、あるいは、魚アレルギーかもしれません。
そこのところは素人には判断つきにくいところですので、やはりお医者さんの診断を仰ぐ必要があります。
さて。
抗ヒスタミン剤の副作用
上記のようなヒスタミンによる症状を緩和するために、抗ヒスタミン剤を使うことも多いと思います。
たとえば風邪薬にも入っていますし、花粉症の薬やかゆみ止めにも入っています。
でも心配なのは副作用ですよね。
これ、肌に塗る抗ヒスタミン剤については、用法用量を守っている限りは、心配は要らないでしょう。もちろん、肌に合う合わないはありでしょうけど。
問題なのは「飲む」抗ヒスタミン剤ですね。花粉症の薬なんかもそうですけど。そういうものに副作用はないのかと。
昔はその副作用はけっこう問題になったようです。
どういう副作用かというと、主に眠気と認知機能の低下です。
認知機能の低下は「インペアード・パフォーマンス」なんて言ったりもします。要するにぼーっとしてしまうということですね。
そういう副作用を知らずに飲んでしまうと・・・たとえば、自動車の運転をしなければならないのにその前に飲んでしまうと、これは交通事故の原因にもなりかねないということです。
ただこれ、最近では随分改善されています。
昔のものは「第一世代抗ヒスタミン薬」なんて呼ばれています。これ、血液に乗って脳にも届いていたんです。だから上記のような副作用が表れました。
電材のものは「第二世代抗ヒスタミン薬」と呼ばれていて、脳への影響は劇的に減り、その一方で、不快な症状を緩和する効果は上がっています。
とはいえ・・・
ヒスタミンってもともと、必要だから分泌されているものですので、抗ヒスタミン剤も、過剰に用いたりしないよう、気をつけなければならないでしょう。