花粉症の季節ということもありますが、猫アレルギーにしても食物アレルギーにしても、その発症のメカニズムは同じだと考えられています。
で、どういうメカニズムかというわけですが・・・
アレルギー反応を起こす役者4人
アレルギー反応には4人の役者が関わっています。
・抗原
・IgE
・肥満細胞
・ヒスタミン
この4人。
抗原
抗原というのは、アレルギーを引き起こすものとしては「アレルゲン」と呼ばれますよね。たとえば、花粉症におけるスギ花粉とか。
IgE
次のIgEというのが・・・ちょっとわかりにくいですよね。^^;
アルファベット3文字で、「なんじゃこりゃ」と。
IgEを他の言葉で言うと、「免疫グロブリンE」となります。「Ig=免疫グロブリン」なんですね。
・・・余計にわかりにくい。
免疫グロブリンは別の言葉では「抗体」と言われます。抗体というのは、私たちの体にとって害となるような「異物」、たとえば細菌などを排除するために働いてくれるものですね。
だからIgEはそうやって働いてくれる抗体のうち「E」さんと呼ばれる人なんだと、思っておけば良さそうです。
肥満細胞(マスト細胞)
次の肥満細胞ですが・・・これも名前からして誤解されそうですよね。別に、肥満の原因になる細胞ではありません。
顕微鏡で拡大して見るとですね、ふくらんでいるようにみえるんですね。肥満しているようにみえる。だから肥満細胞。見たまんま。
別名、「マスト細胞」とも呼ばれます。
この肥満細胞も、先のIgEと力を合わせて、「外敵」をやっつけるお仕事をしてくれています。
ヒスタミン
そのお仕事をするために、肥満細胞が使う「手下」がヒスタミンです。
こう書くと・・・
「みんないいやつじゃん」
「なのになんで花粉症とかで私を苦しめるの?」
と思ってしまいます。
一体この人たちは、どんな間違いを犯してしまっているのか?
彼らが真っ当に働く様子
まず、一般的なお仕事の仕組みを説明しましょう。
私たちの体に、外敵が侵入したとします。仮にその外敵をA菌としましょう。A菌、有害な細菌です。
すると、このA菌担当のIgEさんが、体内で増えるんです。なんのために増えるかというと、
「危険なA菌がやってきましたよ!」
と、肥満細胞に知らせるため。まあ、肥満細胞がIgEの親分みたいなものですね。太ってて、貫禄あるし。(笑)
で、たくさんのA菌担当IgEが肥満細胞のところにやってきて、肥満細胞に知らせるわけです。
「こんなやつが攻めてきましたよ!」
「親分、はやくヒスタミンさんを派遣してください!」
そしてIgEは証拠として、A菌をひっ捕まえて肥満細胞に見せるんですね。
そうすると、肥満細胞親分は、ヒスタミンその他の「外敵をやっつけるための手下」を使い始めます。
これによって、めでたくA菌はやっつけられて、私たちの体に平和が戻るというわけです・・・
が。
狂った仕事をしてしまう様子
IgEさんっていろいろな性格の人がいますので、中には変な人もいるんです。
変な人というのは・・・無害なものに過剰反応してしまったり、というタイプです。人間にもいます。^^;
花粉症の場合は、「スギ花粉」という本来無害なものに過剰反応してしまうIgEさんが、体内にいっぱいいるんです。
「我こそはスギ花粉担当IgE様なるぞ。喜べ、人間」
と勝手に役職についてしまっているわけです。
それで、スギ花粉が体に入ってくると、大量の「スギ花粉担当IgE」が親分のもとに駆けつけるんですね。
で、親分の肥満細胞さんは、たくさんの子分にもみくちゃにされて、わけがわからなくなって、ヒスタミンその他の、外敵と戦うための手下を手当たり次第ばらまいてしまいます。
これによって・・・私たち人間は、くしゃみ鼻水が止まらない、目が痒くて涙も止まらない・・・なんて事態になってしまうというわけです。
これ、猫アレルギーの人の場合は、「ネコ担当IgEさん」が体内にいっぱいいるんです。小麦アレルギーの場合は「小麦担当IgEさん」ですね。
で。
ヒスタミンの働き
親分の肥満細胞が「ヒスタミン」という手下をばらまくということでしたね。
このヒスタミンにはどういう作用があるのかと。これ、以下のような作用があります。
・血圧を下げる
・血管透過性亢進
・平滑筋収縮
・血管拡張
・腺分泌促進
・感覚の刺激
かゆみや痛み
ヒスタミンは「かゆみ物質」なんて呼ばれることもありますが、これはヒスタミンが感覚神経を刺激するからです。これによって痒みや痛みが現れます。
アトピーなど、「かゆい」アレルギーはこの影響ですね。
湿疹
それからアトピーというと、肌に湿疹ができて、「ジュクジュク」状態になることがありますが、これは「血管透過性亢進」によって起こると考えられます。
これ、血管の壁をすり抜けて、水分が血管の外に出やすくなるということです。それで小さな水ぶくれ馬ブツブツとできて、それが潰れるとジュクジュクになる、ということになります。
ヒスタミンはなぜこんなことをしてくれるのかというと、細菌などと戦う白血球ですね、これ、いつもは血液の中にいますから、この白血球が
「血管の壁をすり抜けて外に出られるように」
ということです。「白血球さん、血管の外に出て外敵と戦ってください」ということです。そのためにヒスタミンは「血管透過性」を上げるということです。
鼻水
腺分泌の促進というのは、たとえば花粉症などで鼻水が止まらなくなることですよね。悪いものを押し流そうとしているわけですね。本当は悪者じゃないのに。
喘息
平滑筋が収縮するというのは、たとえば喘息とかでありますね。喘息は、気管支の平滑筋、まあ筋肉の一種ですが、これが収縮したり痙攣したりすることで起こります。
これも、本当は悪くないのに、悪いものを出そうとしているわけですが、平滑筋を異常にギュウギュウと縮めようとするから痙攣して、喘息発作ということになるわけです。
悪くないものはなくならないから…
アレルギーがなぜ困るかというと、ここなんですよね。
本当に悪いものに反応するだけなら・・・これはありがたいことですし、悪いものをずっと身の回りにおいておくなんて考えられませんから、IgEさんたちのお仕事も、悪者がいなくなった時点で終了です。
ところが。
アレルギーの場合、本来悪くないものに反応してしまうわけです。悪くないものだから、これは身の回りに常にある可能性が高いです。
私たちは、悪くないものを排除しようとは・・・思いませんからね。
となると。
花粉もそうですが、いつまでたっても身の回りからなくならないわけです。となると、おかしくなってしまった「花粉担当IgEさん」が働き続けてしまうことになります。
そんな、無理して働かなくてもいいのに!
でも働き続けてしまうので、苦しいアレルギー症状が繰り返されることになります。
これがアレルギーのつらいところですね。
本当に悪いもの、たとえば細菌なら、私たちは殺菌してなくそうとします。
でも本来悪くないものに対しては、そんなことは考えません。だからアレルギー症状は続いてしまうことになります。
なぜ「狂ったIgE」が現れるのか
ここでこう思った人もいると思います。
「そもそもなぜ、悪くないものに反応するIgEが増えてしまうのか」
この点については、現状、確かなことはわかっていないようです。
もちろん、遺伝の影響もあるでしょう。
でも遺伝だけでは、昔よりアレルギーに苦しむ人が増えていることが説明できません。
そこでたとえば、有害な化学物質が増えたからだとか、衛生に気を使いすぎるようになったからだとか、そんな原因が考えられています。
「衛生に気を使いすぎるとアレルギーの原因になり得る」
というのはどういうことかといいますと・・・
あんまり私たちが潔癖になって、抗菌殺菌とかやっていると、IgEさんとしては外敵に遭遇することがめったになくなってしまうわけですよね。
そうなると、ちょっとしたことでも反応しやすくなってしまうということです。
人間にたとえるとわかりやすいかもしれません。
たとえば、戦場に出ることが多い兵隊さんがいるとしましょう。
その人は、街の中で、ちょっと顔が怖い人に話しかけられたとしても、全く動じることもなく普通にお話できるでしょう。
ところが、ずっと「優しい身内」に囲まれて過ごしてきた「お嬢様」ならどうでしょう。
ちょっと顔が怖い人が道を尋ねてきただけで、悲鳴を上げてボディガードを呼んでしまうかもしれません。
IgEさんも、似たようなことになっているのではないかということです。