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結論から言うと「役立つ」と考えて良さそうですが、もちろん「これだけ」でなんとかなるというものではないのは、どんな食品や栄養成分にしたって同じですね。
さて、「役立つ」として、じゃあどういう理由で、どういう仕組で役立つのか納得できなければ三日坊主になる可能性が高まります。^^;
ということで、腸内細菌と短鎖脂肪酸が、ダイエットに役立つ理由を調べてみました。
短鎖脂肪酸とは
まず「短鎖脂肪酸って何?」と思っちゃいますが、人間の体内にあるものは主に「酢酸」「酪酸」「プロピオン酸」の3種類です。短鎖脂肪酸って、けっこう種類が多いのですが、人間の場合この3つ。
で、酢酸というと「酢」ですから、短鎖脂肪酸は「何かすっぱい物質」とイメージしておくと良さそうです。
そしてこの短鎖脂肪酸は腸内細菌、中でも善玉菌が食物繊維を発酵して作ります。逆に悪玉菌は、短鎖脂肪酸によって「殺菌」されてしまいます。
腸で腸内細菌によって作られた短鎖脂肪酸は、このあと吸収され血液に入っていきます。
2つのスイッチ?
そしてダイエットに役立つというわけですが・・・これがどういう仕組みなのかと。
短鎖脂肪酸は、「2つのスイッチ」を押します。
一つは交感神経のスイッチ=GPR41。
もう一つは白色脂肪細胞のスイッチ=GPR43。
正確には「短鎖脂肪酸受容体GPR41」「同43」なのですが・・・
GPR41とか43とか言っていたら混乱しそうなので、単純に「交感神経スイッチ」「脂肪細胞スイッチ」と呼びましょうか。
交感神経スイッチ
で、短鎖脂肪酸のうち、酪酸とプロピオン酸は「交感神経スイッチ」の方を押します。
するとどうなるかというと、交感神経が活性化してノルアドレナリンが増えます。
自律神経には交感神経と副交感神経があって、交感神経の方は「活動力」、副交感神経の方は「リラックス」を司ることでバランスを取っています。
だから、短鎖脂肪酸によって交感神経スイッチがオンにされるということは、活動力が高まり、エネルギー消費もアップするということです。
つまり、脂肪も燃えやすくなるということです。
脂肪細胞スイッチ
もう一つのスイッチ、「脂肪細胞スイッチ」のほうは、酢酸とプロピオン酸が押します。
このスイッチを押すと、脂肪細胞が大きくなる・・・のではなく、脂肪細胞に入る「扉」が閉じられてしまいます。
つまり、脂肪細胞にエネルギーが入ってこなくなるので、脂肪細胞が大きくなったり増えたりしづらくなるというわけ。
一旦まとめ
交感神経スイッチ→エネルギー消費アップ
脂肪細胞スイッチ→脂肪成長ダウン
この二つの仕組みによって、短鎖脂肪酸はダイエットに役立つと考えられているということです。
さて。
その他の効果
タイトルに「ダイエットに役立つだけじゃない」と書きましたが、他にどんなことに役立ってくれるんだ、ということですよね。短鎖脂肪酸は。
メタボリック症候群
まず、ダイエットに役立つということは、メタボ予防にも役立つと考えられますよね。
メタボというのは・・・ただの肥満じゃありませんよ?
メタボリック症候群・・・内臓脂肪が増え、血圧や血糖値が上がり、動脈硬化が進み、最悪の場合命の危険すらある「悪性肥満」です。
これをいくらかでも防ぐことができるということですね。
大腸の健康
それから、短鎖脂肪酸は悪玉菌を「殺菌」するということでしたが、これはつまり、悪玉菌が作り出す有害物質を減らすということでもあります。
これは大腸がんの予防を始め大腸の健康に役立つことでしょう。
短鎖脂肪酸は悪玉菌を退治するだけでなく、大腸のエネルギーにもなり、大腸のバリア機能を高めると考えられています。その点でも大腸の健康に役立ちそうですね。
全体的な健康
また、有害物質が腸から吸収され血液に乗って全身をめぐると、いろいろな病気の原因になりえますし、肌の不調の原因にもなります。
腸内環境の改善で肌年齢はどうなる?~乳酸菌ときれいなお肌の関係
抗がん作用
ケトン体(アセト酢酸、βヒドロキシ酪酸)も短鎖脂肪酸の一種で、私たちの体内に存在します。
これに関しては、試験管レベル、及び動物実験の結果しかありませんが、抗がん作用がある、という結果も出ています。
これに関しては、どれほど希望が持てるものかは、まだまだ未知の部分が多いですね。
ただ・・・
気になるところ
ここまで読んできて、これが気になった人もいるのではないでしょうか。
「交感神経が活性化してノルアドレナリンが増えます」
短鎖脂肪酸の働きとして、これが起こる・・・
「これって、ストレスを受けたときの反応と同じじゃないの?」
ということです。
短鎖脂肪酸を増やすために、ヨーグルトを食べたら、やたら不安を感じるようになるとか、イライラするようになるとか、怒りっぽくなるとか・・・
そんなことはないの?
ということが気になる。
これに関しては、乳酸菌を積極的に取るようになったからといって、精神不安定になったという報告は見当たりません。
逆に、精神の安定に役立つという意見なら沢山あります。
これはなぜかというと、脳が「幸せ」「安心」を感じられる神経伝達物質として、「セロトニン」というのがあるんですが、このセロトニンの生成に、腸内細菌が大きな役割を果たしているからです。
つまり、
腸内の短鎖脂肪酸が増える
→悪玉菌が減る
→セロトニンが作られやすくなる
→精神の安定に役立つ
ということのようです。